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自然治療と現代治療

今回から連載で動物の自然治療について紹介させていただく事になります。まずはじめに、「自然治療と現代治療はどう違うの?」と思われている方も多いと思いますので、簡単に説明してみます。
現代治療は西洋医療とも言われ、近年の科学の発達に伴い、分析や実績を通して科学的に証明された概念を基に築き上げられた医療を言います。主に外科的手法や薬物療法に重点が置かれています。また、検査により、血液、尿、細胞、レントゲン・CT・MRI画像などを分析し、検査値の異常を見つけることにより、診断を下します。
出ている症状、検査の異常値を病気として認識するため、治療の対象は症状を消すこと、異常値を正すこと、悪い部分を切除することが目的となります。
よって治療には、抗炎症薬、抗高血圧薬、抗アレルギー薬、抗生物質、抗うつ薬などのように「抗〜」という、症状に対抗するための薬がよく使われています。
一方、自然治療は代替医療とも言われ、科学的方法で証明されてこなかった、伝統的、経験的手法を言います。治療法は自然界に存在する治療因子を用います。すなわち、熱や光、自然食、薬草、ホメオパシー、鍼灸、マッサージ、などです。また、症状は体の不調和のサインとみなすので、治療は症状のみを消すことではなく、症状を起こしている原因を見つけ、体の方の治癒力を高めることで、原因を追い払う手助けをするものです。


自然治療をはじめたわけ

私が自然治療を動物の診療に取り入れたのは、次のような体験からでした。十数年前のことですが、自分や家族の体調不良が食事や生活スタイルにあったことに気づき、自然治療を行っていくことに十分納得が出来て実践したところ、私の30数年引きずっていた不調が改善され、子供たちのアトピー、喘息もよくなってしまったこと。また、同時に人にも動物にも、現代治療の限界を感じていたこと。それらがきっかけとなり動物への自然治療を始めました。
また、夫は現代治療の獣医ですから、自然治療が適切でない場合には、現代治療を併用して行えばいいという安心感があったから始められたことだと思っています。
まず、家で飼っている動物たちに手作り食を食べてもらい、具合の悪い子にはホメオパシーの処方や光線治療をしていきました。6年ほど前のことです。その中の猫のサクラは当時10歳ですでに腎機能の低下、結膜炎、血便を伴う下痢をたびたびする、とても怖がりの猫でした。食事と生活スタイルを変えると、明らかに結膜炎と下痢がよくなり、1年経った頃にはほとんど症状がでなくなっていきました。おまけに怖がりの性格が一転して、見知らぬ人でもひざの上に乗るほど人が好きな猫に変身しました。腎臓が悪かったので、時々は点滴は行っていましたが、点滴をした後には光線照射を行っていたので、体を冷やすことも無く(腎臓病は冷えが禁物)、点滴の吸収もよかったので、静脈にチューブを入れる辛い点滴ではなく、背中にらくださんのように点滴を落とす皮下点滴で大丈夫でしたので、ストレスの削減になったと思います。サクラは大晦日に家族そろってご馳走を食べ、1月4日に腎不全の症状はないまま静かに天国に旅立ちました。15歳でした。猫の腎臓病は持って1〜2年といわれていますから、5年間美味しいものを食べ、ストレスを感じさせない暮らしが出来たことは、自然治療を実践していくにあたって、大きな励みとなりました。
もう一匹の猫のウメは2歳から毎冬、血尿、尿閉(スツルバイト結石のため尿道がつまり尿がまったく出なくなる)を繰り返し、何度も緊急処置をしていた猫です。この子にも処方食ではなく、水分の多い手作りごはんを食べてもらい、膀胱炎の症状が出たときにはホメオパシーを処方して経過を見ました。自然治療を始めて1年目の冬にはやはり血尿と尿閉を起こし、緊急処置もしました。(尿閉の場合は命にかかわるので、自然治療だけでは危険を回避できない場合いは現代治療を行います。)しかし、処置後の回復が早くなっていることが実感できました。そして現在7歳ですが、自然治療2年目からは一度も膀胱炎を起こしていません。もちろん処方食も食べていません。


ホリスティック医療

ちょうどその頃、獣医師の中にも、食事療法、ホメオパシー、鍼灸などホリスティックな診療を取り入れている先生が現れ始め、学会を通して勉強会や交流会を深められる機会が増えました。その頃から私も夫の運営する動物病院の中で、自然治療を希望される方を対象に食事指導やホメオパシー治療を始めました(旧ナチュラルライフサポート)。数年間自然療法を行わせて頂き、問題行動から、慢性皮膚炎、胃腸炎、膀胱炎、てんかん、腫瘍などさまざまなケースを診させていただいています。劇的に改善が見られるケースもあれば、まだまだ力の及ばないケースもあります。しかし、自然療法には副作用の心配がないこと、メンタル面でのケアーが可能であるため、現代治療を十分補えるだけの有難い治療法であると確信できました。
このごろは人間の方では、マクロビオティック食やアロマ、ホメオパシーなどのナチュラルケアーが広まりつつありますので、人と同じ感情を持ち、人と同じ生命活動をしている動物でのナチュラルケアーももっともっと多くの方に知っていただけたら、病気治療の苦痛の削減および心身ともに健康な動物が増えてくれると思っています。
日本の獣医大学ではまだまだ代替医療の教育機会がありませんので(一部鍼灸などの講義や研修をしている大学もあるようです)、一部の獣医が自然療法を現代治療と併用して行っているのが現状です。しかし、ここ数年、東洋獣医学会や日本ホメオパシー医学会などの代替医療を勉強する学会の会員数が増え、盛んに勉強会なども行われるようになっていますから、今後の獣医代替医療の発展が楽しみです。また、患者さんサイドでの需要も増えてきているのではないでしょうか。代替治療のニーズに十分応えられるよう、自然治療を取り入れている先生方はさまざまな工夫を凝らしています。
自然治療では1件の患者さんに多くの時間を要してしまうので、私のクリニックでも、事前の問診や診療後の経過をメールや電話でやり取りするなど、効率よく診療を進められうようなシステム作りをしています。また、当院は現代治療は一切行っていませんので、検査や現代治療が必要と診断された患者さんには、自然治療に理解のある病院を紹介しております。
自然治療をたくさんの方に知っていただき、たくさんの動物たちが心身の苦痛や抑圧から開放され、自然と調和の取れた幸せな生涯を過ごせることを望んでいます。


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